ティームティーチング(複数教師による協力的指導)

はじめに

 生活科の誕生、中学校選択履修の導入、そしてティームティーチングの導入などといった、これら一連の教育改革は、一人一人の体験や実感を大切にした真の主体性や人間性を育てることが学校教育の中心課題であるということへの様々なレベルでの対応といえる。理念として知識・理解・技能を中心とする「見える学力」から、興味・関心・意欲や思考力・判断力という「見えにくい学力」を重視すること、また、それが学校教育の課題ではないか。しかし、具体的に授業づくりをどうするかということになると、まだはっきりとした指針やガイドが示されているわけではない。(もちろん子どもとの関わりでマニュアルに沿って行動するということは、望ましいとは思われないが・・・)このような状況においてTTの導入は、学校現場に具体的な授業づくりの改革を求めているともいえるのではないか。


従来の学習指導

 同一の学習目標、学習内容、学習教材、学習方法によって授業が展開され、同一の学習成果を共通に期待している。授業を構成する全ての要素が画一的である。一斉画一的な指導が「指示待ちの子ども」を育てている可能性がある。

なぜティームティーチングなのか

(1)  学級崩壊:

(2)  児童生徒の学力の低下:

(3)  教師の個性・専門性を生かす:

(4)  子どもの多様な学習状況に個別的に指導できる:

(5)  教師を特定して子どもから進んで働きかけることができる:

(6)  教師の負担軽減:

文部省

*子供の私語や立ち歩きで授業ができなくなる小学校の「学級崩壊」に対応しようと、文部省は担任教員が一人でほとんどの授業を受け持つ現行の学級担任制を見直すために、研究会を発足する方針を固める(1999,8)

1人担任制見直し検討>

@    教員と子供の密着度が高い分、いったん関係が悪くなると修復が難しい。

A    崩壊状態になっても、担任教員が自分だけで問題を抱え込んでしまいがちで、他の教員は助言をしにくい。

対 策

@    同学年の担任教員同士が授業を交換しあう。

A    複数の教員が学年全体を担当する。

B    現在、算数・理科が中心となっているティームティーチングの対象を広げる。

TTによる授業づくりでは何が問題となるか?

<過去のTTにみる課題>

(1)学習指導法の改善が中心でティームの協力・連携などの教授組織あるいは学校組織の研究にまで至らなかったこと。

(2)TTを支える時間割編成に柔軟性がかけていたこと。

(3)TTに適した施設・設備が乏しかったこと。

(4)TTの試みを定着させる課題意識やTTの指導技術が不足していたこと。

(5)学級大国的な考えを捨てきれなかったこと。

(6)現行の教職員定数ではTTの編成が困難であったこと。

*現在では、文部省の教職員配置改善による加配教員制度が契機になり、行政による制度的保障がなされ、また、オープンスクールや空き教室の利用など、スペース等の施設・設備面でも不充分ながら改善されている。しかし、現段階においても過去と同じようなことが課題となってくる。

TTを実施する上での課題

 教師は、TTを実施する上では授業の条件整備面を整える、そしてそのためには学校経営あるいは行政面の制度的保障が不可欠であると感じている。

対処策

(1)TTにおける役割をはっきりさせる。

(2)打ち合わせ時間を生み出す工夫。

(3)TTの考え方を校内全体に広げる。

TTによる学習効果を高めるポイント

(1)子どもの理解を深め、共通の指導観に立つ。

(2)複数教師の役割分担を明確にした学習指導案を開発する。

(3)教師の相互理解と信頼関係を深める。

(4)教師以外の人とのTTの方法を開発する。


静岡県境職員組合の取り組み

30人以下学級」での学びの保障を ―21世紀への学級づくり−

30人以上でも、1学級に二人の学級担任を付ける。

T・T:複数の教員がティームをつくって授業を行う方法。子供一人一人への対応ができるので、子供の主体的学習に効果を上げている。

(保護者・子どもたちからの願い)

@ 子供一人一人に目をとどかせ、分かるまで教えてほしい。


A 子供が中心となる授業や活動を増やし、自主性や意欲を育ててほしい。

B 実験や体験を多く取り入れて、授業をもっと分かりやすくしてほしい。

C 選択教科を増やしたり、自分でテーマや研究内容を選ぶことができる授業を増やしてほしい。

「教わる」から「自ら学ぶ」へ

<目指す学校>

例1.学ぶ楽しさや学校生活の基本を知る小学校一年生を
30人以下の学級にすることで、先生とふれあう時間を増やすことができる。

1学級が1516人ぐらいでは、集団で活動する良さを十分体験できないと判断した場合には、30人以上でも1学級にし、2人の学級担任がつくことができる。

例3.自分自身を見つめ、これからの生き方を考える中学校3年生を30人より少ない学級にすることで、先生と話す機会を増やすことができる。

4.教科によっては、30人以上の学級にして、2人の先生による授業を行い、教科の楽しさをいっそう深く味わうことができる。

<子ども達の声>

・学級の人数が少なくなって先生とふれあう時間が増えました。

・二人の先生がTTをやってくれるので、分からないところを気軽に質問できます。

・実験や体験をする授業が増えて、授業が楽しく良く分かります。

それぞれの専門教科の先生が、学ぶ楽しさを支援してくれます。


関市教育委員会の取り組み

 小学校のクラスで担任以外に非常勤講師として教員を配置し、ペアで授業を行っていく「わかあゆプラン」を実施。市教委が単独で非常勤講師を配置してティームティーチングを実施したのは関市が東海地区では初めてである。関市教委では「個性重視の教育とともに、いじめや不登校の未然防止にも対応できる」としている。


まとめ

 大人が子供とどう関わっていくかということについては、今日、いろいろな形で紹介されており、それらのマニュアル本なども多く世の中に出まわっている。これは、何も大人と子供の関わりだけではなく、人と人との関わり方についても同じような事がいえると思うのだが、何かに悩んだり、迷ったありした時に、すぐにその解決策のようなものが手に入る時代である。いろいろな情報をそのまま受け入れているという大人は少ないとは思うが、やはり“やり方重視”になってしまうことがあるように感じる。特に初めて自分が遭遇したことに関しては、そういう情報に敏感になってしまうのではないだろうか。個人的な考えではあるが、特に教師と子供たちの間では、“どうやって関わっていくか”といったやり方よりも“関わり”そのものを重視していくべきだと考える。「いろいろな関わりを生み出すために、関わり方を考える」という思いを持ちながら、これからのいろいろな教育改革に取り組んでいけたらと考える。